2010年5月30日日曜日

久々の本感想

というわけで、久々の本感想を書いていく。


▼「少女探偵は帝都を駆ける」芦辺拓
昭和初期の大阪を舞台に、地元のレストランチェーン社長令嬢の娘と、東京出身の新聞記者の二人が事件を解決する、七つの短編からなる推理小説である。
まず思ったのは、実によく調べているという点。時代は昭和十年から十一年であり、当時の流行から大衆娯楽、一般常識、科学技術、果ては社会情勢や実在人物の行動・言動まで、実に細かく描写されていた。こういう描き方はNHK連続テレビ小説を思わせる。「世界の多くの国は日本や満州国のことを誤解して、ひどく敵視している(本文抜粋)」という一文には、不謹慎ながら笑ってしまった。
加えて、肝である推理部分もよくできている。近頃の推理小説ではあまりトリックは使われないのだが、この本ではトリックがふんだんに使われており、それこそ昭和時代の金田一耕介全盛期を思わせる。特に短編最終話は度肝を抜かれた。
ぜひとも、続刊を読んでみたい。いや、どうやらその前にも本が出ているようなので、そっちも読んでみたいと思った。

▼「吸血鬼はお年ごろ」赤川次郎
1981年に出た吸血鬼シリーズ第一弾である。
吸血鬼と人間のハーフである娘が活躍する推理小説で、この娘は吸血鬼特有の怪力や催眠術などを駆使して事件を解決する。
赤川作品には少女を主人公にした小説が多いが、今回は人外(正確には人外とのハーフ)が主人公という、非常に異色な作品である。しかし、少女の勇気ある行動はすべて共通である。
本作は青少年向けかつ短編集であり、推理要素は薄いが、少女の活躍と友達との掛け合いが見どころだろう。

▼「万能鑑定士Qの事件簿(Ⅰ・Ⅱ)」松岡圭祐
父の勧めで読んだ。
本のタイトルに数字がふってあったのでシリーズものなのかと思ったら、前後篇だった。やられた。一冊で話が完結しないぞ、この本。この二冊をまとめて一冊にして売ればよかったんじゃないか?出版社のえげつなさを感じる・・・。
話は面白かった。事件のスケールが実に大きかったが、それを実行した犯人と主人公の知恵比べがすごい。というか、作者もよくぞここまで考え付いた、そして調べ上げた、という感じだ。正直、最終的なオチは二巻の冒頭付近で何となくではあるが考え付いていたのだが、それを実際計算して書き連ねた作者には脱帽である。
いろいろ、実に勉強になった。

▼「グリーンライン」赤川次郎
1992年の小説である。
主人公は少女なのだが、その少女が活躍するわけでもなく、いろいろな人物に視点をあてている。特に犯人視点が多く、刑事に精神的追いつめられる様がよくわかる。精神的に追い詰めるなど実にえげつないように描かれる刑事も、最後には別の一面をのぞかせるようになる。
本作は、はっきり言ってドロドロである。意外な事実はあったが、それによって重苦しさが倍増する。後味が悪い小説だった。


ところで、今読んでいるのは大迫純一著「ゾアハンター2」である。シリーズもので、7巻まで刊行された。この小説の一作目は以前読んだことがあったのだが、今回大迫氏追悼祈念として二冊目に手を出してみた。
感想は乞うご期待。

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